株式会社木村鋳造所は、創業100周年記念プロジェクト『ぜつめつしそうな 妄想かいじゅうずかん』の一環として、伊豆箱根鉄道駿豆線の車両1編成を使ったポスタージャックを8月28日から9月13日まで実施した。

『妄想かいじゅうずかん』は、生成AIが身近な存在となる中、子どもたちの自由な発想や「妄想する力」を応援するプロジェクト。全国の子どもたちから自由な発想で描いた「妄想かいじゅう」を募集し、作品を図鑑として公開するほか、木村鋳造所の技術を活用して立体化する取り組みとなっている。今回のポスタージャックでは、「すぐに答えを求めず、立ち止まって考えること」や「間違いや偶然から、自分だけのイメージを広げること」をテーマにグラフィックを展開。子どもだけでなく大人にも、日常の移動時間を通じて「妄想する時間」の意味を問いかけた。

同社がプロジェクトに合わせて実施した親子調査では、アイデアを考える際にAIを利用すると回答した子どもは52.8%に上った。一方、子どもが絵を描いたり、物事を考えたり、自由に何かをつくったりする時間について、「十分に取れていない」「わからない」と回答した親は合わせて71.7%となった。生成AIやデジタル機器が日常に入り込む中で、自分の頭で自由に発想する時間に改めて目を向ける企画となった。

電通東日本のクリエーティブディレクター冨田孝行氏とプランナー野田祐希氏によれば、今回「妄想」に着目した背景には、木村鋳造所が手掛ける鋳造という仕事そのものがあるという。鋳造は、人の頭の中にあるアイデアや想像を実際の「かたち」にする技術であり、その出発点となる自由な発想を同社は大切にしてきた。100周年を迎えるにあたり、次の100年に向けて「ものづくり企業として何を残していくべきか」を考える中で着目したのが、常識や正解にとらわれない子どもたちの「妄想する力」だった。生成AIなどによって知りたいことへすぐにたどり着ける時代だからこそ、答えのないことを自由に考え、発想を広げていく時間に価値があると考えたという。一見無駄にも思える「妄想」の中に、新しいものを生み出す力があるとの考えから、子どもたちが描く「妄想かいじゅう」を実際にかたちにするプロジェクトへとつながった。

交通広告を選んだ理由について、冨田氏と野田氏は、電車での移動時間に着目した。スマートフォンを見る人が多い一方、ぼんやりと考えごとをするなど、日常の中で少しだけ思考に余白が生まれる時間でもあることから、「妄想」について考えてもらう場所として車内広告との相性が良いと判断したという。

プロジェクトの参加対象となる子どもだけでなく、その親にも「妄想すること」の意義や価値を届けることを意識。ポスターでは企画そのものを説明するだけでなく、大人が「最近、妄想していないな」と気づいたり、「自分の子どもにはもっと自由に考えてほしい」と感じたりするような、見る人の気持ちが少し動くコピーやビジュアルを目指した。生成AIによって短時間で答えを得られるようになった時代に、あえて「答えのないことを考える時間」に目を向けた今回のポスタージャック。電車という日常的な移動空間を、子どもと大人がそれぞれの「妄想」について考える場へと変える広告展開となった。

