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「非日常感」がポイント?「わかさ生活広報」のX運用テクニック
前編では、「トレンドワードを活用した投稿」の考え方や運用体制、リスク管理に関する話を聞きましたが、後編では、わかさ生活アカウントを象徴する“馬”誕生の秘密や毎日投稿を継続する上で大切にしている考え方を聞いていきます。
“動き”が出せない分、投稿を考えるのが結構苦しかった
編集部:わかさ生活アカウントを見ていると、マスコットキャラクターである「ブルブルくん」以外に、“馬”が登場してきますが、馬が出てきた経緯を教えてください。
わかさ生活:私(中の人)がアカウントを引き継いだのが2020年の7月でしたが、数カ月後には投稿ネタが不足した状態が恒常化していました。基本はブルブルくんを使って投稿していたのですが、ぬいぐるみなので“動き”が出せない分、毎日投稿を考えるのが結構苦しかったんです。
2023年10月にWEBメディアで取材して頂いたのですが、取材をして頂いたタイミングであり、比較的思い切った取り組みに挑戦しやすい雰囲気もあったので、“馬”を出し始めました。
【今でこそ定着している馬キャラクターも苦悩の末に生まれたそうだ】
自社キャラクターの被り物という選択肢もありましたが、全く関係ない“馬”を使い「わかさ生活のアカウントで馬?」という違和感で1回立ち止まってもらう事を狙っています。
編集部:“馬”を出すにあたって、キャラクター作りはどのように考えられたのですか。
わかさ生活:馬をやり始めた当時は、自分自身が新卒1年目でした。この“新卒”って立場がどういう属性なのかという外からの見え方を意識するようにしていました。
社会人の方からすると新卒は「誰もが通る道」、10代や学生の方からすると新卒は、社会人の中でも「身近な存在」、親世代からすると新卒は「自分の子供と重なる存在」…こうやって考えると自分が置かれた“新卒”という立場は、誰にとっても近しく、親しい存在なのではないかと考えたんです。そこを上手く活かした運用を心がけていました。
無理に面白い事だけを投稿しようとしない
編集部:2020年から運用されてもう4年経過されたと思います。馬のキャラクターがあるとはいえ、毎日やっていれば投稿ネタもさすがに尽きてくるのでは…?と思いますが、投稿を継続するコツはありますか?
わかさ生活:前提として、企業アカウント担当を仕事としてやっている以上、更新し続けていくことはマスト要件だと思っています。ただ、そうはいっても毎日やっていればネタには困ります。先ほど、ネタ不足ゆえに“馬”を出した話をしましたが、これはどの企業も直面するのではないでしょうか。
なので私はアカウントを運用する上で、投稿を「共感」「愛着」「意外性」の3種類に細分化し、“無理に面白いことだけを投稿しようとしない”ことを意識しています。
編集部:「共感」「愛着」「意外性」?
わかさ生活:はい、簡単にまとめるとこんなイメージです。
1、共感:Xを象徴する“拡散”や“話題化”を狙った投稿。トレンドも考慮。
2、愛着:拡散などは狙わず、“今日もタイムラインにわかさ生活がいる”と思ってもらうための投稿。ここでは、無理に面白さは求めない。
3、意外性:投稿の中にちょっとびっくりする要素や、空白や突っ込みどころを作ることによって新規フォロワー獲得を狙いにいく投稿。
こうやって各投稿にテーマを持たせて細分化し、全ての投稿で“話題化させることを目的にしない”ことを意識しています。2日間考えて1つ投稿するより、1日1つでも着実に投稿していった方がよいと考えていることもありますが、まずは更新することを大事にしています。
編集部:「意外性」の箇所で上げて頂いた「空白や突っ込みどころ」とは、どういったイメージですか。
わかさ生活:言い換えれば「投稿に対して指摘できる領域を作る」イメージです。例えば、こちらの投稿。
お風呂に入ったブルブルくんですが、そもそもお風呂に入っていること自体はもちろんですが、冷静に見たら入浴剤入りでお湯が透明じゃなかったりしますよね。
実際ツッコミはなかったのですが、「ブルブルくん、どんな入浴剤を入れているの?」といった具合に意図的に投稿へ参加してもらえる空白を作ることを意識しています。
「公式アン“馬”サダー」がユーザーに非日常を届ける
編集部:わかさ生活アカウントの鉄板ネタとして企業間コラボがあると思います。実施するメリットって何でしょうか?
わかさ生活:そうですね。一番はフォロワーの皆さんに「非日常」を届けられる点が大きいです。社内にこもって、ブルブルくんの投稿をするだけでなく、外に出て活動する“新たな一面”を見せられていると考えています。
GMOさんなど異業種の企業はもちろん、「サプリメント」や「健康食品」の軸で見たときに、競合にあたる企業様ともコラボさせて頂いた事もあります。競合というよりは、一緒に業界を盛り上げていくってイメージの方が強かったですね。
編集部:過去の投稿を見るとGMOインターネットグループ代表の熊谷氏との2ショットなどもありました。
わかさ生活:はい、ありがたいことに熊谷代表とのお写真をアップしています。お時間を取って頂けた嬉しさもありましたし、写真撮影にも協力いただきとてもありがたかったです。
あと、他にも企業間コラボの定番フォーマットとして「開けて」ネタがあります。
今まで12社様と実施させて頂きましたが、数千~数万のいいねが集まる定番企画となっています。話題化すると、WEBメディア等でも取り上げられることもありますね。
編集部:他社の社員証を使った投稿も印象的でした。
わかさ生活:「公式アン馬サダー」の取り組みですね。こちらでは、コラボ先の企業に「公式アン馬サダー」として社員証を作ってもらうところからスタートしていきます。
活動は企業様によって異なりますが、例えばGMOさんの場合だと一緒に合同セミナーを開いたり、なぜかWebCMに出演したりもしました。
ちなみに、「公式アン馬サダー」については広告料を一切取っていませんが、一応競合NGとさせていただいています(笑)
表示回数よりも「いいね数」
編集部:投稿を継続するにあたり、日々内容をブラッシュアップしていると思いますが、各投稿の評価軸があれば教えてください。
わかさ生活:月単位ではimp数を見るようにしています。ただ、毎投稿ごとに見ているわけではなく、日々の投稿では「いいね数」を見ていますね。
これは私の考えになりますが、imp数が多いことで表示数が多いことはわかりますが、その表示された投稿が好んで見られているかって分からないんですよね。
例えば、同じ5万impの投稿が2つあったとして、片方はいいね数が40で、片方は2,000だったらどっちの方が質の高い投稿かと言われれば、圧倒的に後者だと思うんです。少なくとも、いいねを押すという行動を起こしている以上、ユーザーがポジティブに捉えていると考えられます。
少し過激な発言をすればimpは比較的伸びやすいと思いますが、そうやって増えたimpが果たして良い影響を与えるのかどうかはまた別の話です。
編集部:アカウント運用によって、サプリメントの売上や知名度向上には繋がっているのでしょうか。
わかさ生活:はい、私が担当を引き継ぐ前と比較しても、確実にX経由での売り上げは出てきています。また、従来のメイン顧客層が50代だったのですが、今はX経由で知ってもらった10代や20代の方も購入してくれますね。
最近だと、高校生の方がX経由でアカウントを知って、ブルブルくん人形を買ってくれたりもしているようです。
引き続き、わかさ生活の知名度アップに努めていきたいですが、今後の目標として「企業アカウントNo.1」があります。一般の消費者の方に「どの企業アカウントが一番好きですか?」と聞いたとき、“わかさ生活”と名前が上がるような存在を目指していきたいと思っています。
【最後に「中の人」と編集部で写真を撮らせて頂きました】
編集後記
今回の記事では「わかさ生活」の公式Xアカウントの裏側に迫るべく、京都本社にお伺いして「中の人」とお話させて頂きました。
トレンドワードを活用した露出増加や、あえて"空白"を作り込む手法など投稿に対する工夫はもちろん、リアルタイムで話題を追いかけ、アルゴリズム変化にも臨機応変に対応するなど、日々進化し続けている様子が伺えました。
お話を聞く中で「投稿を考える時、“初めて見た人”でも理解できるように“ブルブルくん”というキャラクター名を使わず、“ブルーベリー”というワードにあえて置き換えて発信することもある」といった話がありました。
テクニックや経験はもちろんですが、投稿を見るユーザー目線をとても大事にされており、これが愛される秘訣なのかもしれないと、個人的には感じておりました。
今後の目標は「企業アカウントNo.1」とのことですが、「中の人」の熱意は、競“馬”の騎手のように鋭く、確固たる戦略を持っているように見えました。これからも引き続きウォッチしていきたいと思います。
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