伝統を守りながら挑む、時代に合わせた新たな一手
柳井：藤田屋さんでは、お客様のライフスタイルや価値観に合わせた提案をしたり、その温かい接客が魅力だと伺いました。ですが、オンライン上ではどのようにその「藤田屋らしさ」を表現し、お客様との関係性を構築されていますか？ 実店舗とオンラインの連携で、特に効果を感じていることがあれば教えてください。
藤田： 正直なところ、オンラインでの取り組みはまだまだ強化していく必要があると考えています 。ECサイトの工夫やSNSからの動線はまだやりきれていません。ただ、自社ECで注文いただいたお客様には、商品に御礼のメッセージと商品のお手入れ方法の手紙を同封させて頂いております。これは店舗で接客するときにお客様に直接お伝えしている内容なのですが、オンラインだとしても商品が届いた時に温かさを感じてもらえるようにと思って始めました。特に、クラウドファンディングの際は、私が一枚一枚手書きでメッセージを書いていました。
そうしたメッセージについては、かなり多くの方から反響をいただいています。「藤田屋が傘を大切にしているという気持ちが伝わってきた」というお声や、「そこから自分自身の価値観もちょっと変わり、傘に愛着が出た」といった感想をいただきました。感謝の言葉は他社でもやっていますが、お手入れ方法を書いているのが、特にユーザー様から反響をいただいているポイントだと感じています。
柳井： クラウドファンディングにも挑戦されたとのことですが、実施するにあたり、どのような目標を設定し、どのような戦略で臨まれましたか？ 特に、目標達成のために効果的だったと感じる施策があれば、ぜひお聞かせください。
藤田： クラウドファンディングの目標は、金額ベースではなく、「自社と自社の商品をPRする」ことでした。それを通じて、藤田屋の認知を広げ、藤田屋に愛着を持ってもらうことを目標にしていました。なので、商品にフォーカスしていますが、私たちはどうやったら多くの方に傘づくりの魅力を伝え、自社を好きになってもらえるかを考えていました。
戦略としては、商品そのものに焦点を当てるのではなく、私たちの「思い」や「過去の歴史」、そこに込められた職人の熱意に焦点を当てたページ構成を心がけました。結果として、「思いに共感した」という支援者が非常に多かったです。また、クラウドファンディング開始前に、知り合いに「お気に入り登録」をお願いするという“地上戦”も行いました。これにより、スタート時のランキングが上位になり、注目を集めやすくなります。沢山の方々からのご支援のおかげで、プロジェクトスタートから5日目にして目標額を達成することができました。なにより、147名の方にご支援いただいたことに本当に感謝しかありません。
柳井： クラウドファンディングを通じて、新たな顧客層の獲得や、製品開発においてどのような手応えがありましたか？ 今後の新商品開発やサービス展開に、今回の経験をどのように活かしていかれる予定ですか？
藤田： クラウドファンディングを通じて、多くの取材をしていただきました。特に「人」にフォーカスを当てた取材が多く、非常に効果的でした。今回のプロジェクトは、松坂屋さんや静岡新聞 SBSさんが関わり、静岡の未熟な企業を未来につなげる「MIRUIプロジェクト」の一環であり、私たちはその48番目の案件でした。このプロジェクトを通じて、ラジオ出演や松坂屋さんでの展示など、露出するきっかけを作っていただきました。結果、「取材が取材を呼ぶ」ような波及効果が生まれたと感じています。
今後は、クラウドファンディングを通じて得た「想い」や「手応え」を活かし、今後の新商品開発やサービス展開につなげていきたいです。
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地域と顧客と共に歩む、藤田屋の描く未来
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