主要駅依存からの変化
H:一方で、渋谷・新宿など主要駅の広告費がかなり上がっています。
S:そうなるとますます出稿できる企業は限られてきますね。
加藤:体感でも上がっていると感じます。結果として、主要駅以外やローカルな場所を活用する動きが出てきていると思います。
K:コストと話題性のバランスですね。
加藤:SNSで拡散される前提なら、必ずしも一等地である必要はない。むしろストーリーが作れる場所の方が強い場合もあります。
ますます重要視されるアイデア力
K:ある広告代理店の方に聞いたのですが、最近は広告主から「とにかく新しいアイデアを出してほしい」と求められるケースが増えているそうです。
O:企画を外部に依頼することも多いですよね。
加藤:プロに頼むケースもあれば、逆に自社でやるところもある。バズ前提ではないですが、工夫次第で大きな効果が出るのがOOHの面白さですね。
S:人通りが少ない場所でも成立する事例もありますね。表参道の工事仮囲いとか、ほとんど人が通らないのに“撮りに来る場所”になっているなど。
H:あえて人通りが少ない場所を応援広告に使うケースもありますね。
加藤:一方で広告の数値化も求められていますよね。ただOOHは数値だけでは測れない価値もある。クリエイティブや文脈が重要です。
新設媒体の傾向とキーワード
O:最近気になるのは仮囲い+サイネージです。例えば表参道の開発現場でティザー広告を流すなど。高さもあって視認性もいいですね。
加藤:私はフレームレスサイネージが増えている印象です。将来的には円柱型も増えるのではないかと。
K:媒体の入れ替わりが激しい。特に駅ナカは目を離すと柱にサイネージが増えていることも多いです。
S:駅空間もどんどん変わっていますよね。木材を使うなど、洗練された空間になってきているのを感じます。
O:各電鉄も新しい媒体開発に力を入れています。階段ラッピングなど、今までなかった場所を広告化している。
H:場所の空気感も重要です。同じポスターでも出す場所で印象が変わる。
加藤:「枠」ではなく「空間を売る」という考え方ですね。
K:まさにそれ。今は“イマーシブ(没入型)”がキーワードです。
応援広告の拡大
H:応援広告も拡大。クラウドファンディングで資金を集めることが定着していますね。
加藤:ファンによる「応援」とは、もともとは花を送る文化だったそうですね。それが広告に置き換わってきている。
K:“推し活”ととても相性がいいですよね。ファン同士の一体感も生まれる。
O:海外では飛行機やビルへの投影など、規模が大きいのも目立っています。
S:応援広告は、アーティスト本人に“認証”されると価値が跳ね上がります。“認証された”というのがファンにとって勲章になるそうですよ。
街の変化と広告の見え方
O:最近、秋葉原とか上野に行くと、本当に外国人が多くて驚きますよね。
加藤:平日でもかなり多いですよね。銀座や渋谷も観光客が目立つ印象です。
H:渋谷はツアー客も多くて、旗を持った団体とかよく見ますね。時間帯によっては歩きやすさも全然違いますし。
S:OOHは強制的に目に入る広告も多いですよね。私は子育て系の広告がすごく目に入るようになりました。
加藤:自分の状況によっても響く広告って変わると思います。そういうパーソナルな要素って反応に出ますよね。

広告のアーカイブ性と撮影者としての視点
S:昔の広告を見ると、その時代の空気感が分かるのも面白いですよね。
O:コロナ禍のとき、街から広告が消えた瞬間ってありましたよね。
H:でもその記録って意外とちゃんと残していない。
加藤:今振り返ると、かなり貴重な風景だったと思います。
K:写真といえば、撮り方でも個性が出ますよね。私は俯瞰で撮りがちで、場所や周辺情報も含めて残したいタイプです。
O:私は「何を伝えたいか」が分かる写真を意識しています。
加藤:広告って“作品”というよりは、あくまで広告主のメッセージを伝えるものですからね。 目的を持って投資するわけですし。
OOHでコラボする企業 自治体はユニークな表現も
O:定期的にOOHを見ていると、やはり、この企業の広告はクリエイティブが強い、というのもありますね。
H:タレント頼みじゃなくて、表現そのものが印象に残るということですね。
加藤:一方で、データドリブン(客観的データに基づいた判断)で広告を作る企業もあります。海外的なロジカルな作り方ですね。
K:最近は自治体の広告もかなり変わってきましたよね。
加藤:以前は景色や名産品を見せるだけだったのに、今はかなり攻めている。
S:ARを使ったり、ストーリー性を持たせたり。いい意味で“自治体らしくない”広告が増えていますね。
K:OOHって、企業と生活者だけじゃなく、企業同士のコミュニケーションにもなっています。コラボや掛け合いみたいな表現、増えていますよね。
O:最初からコラボと明かさず、“気づかせる設計”も面白いです。
OOHのこれから
O:最後に、今後のOOHのこれからの方向性についてどう見ていますか?
加藤:「場所」「体験」「SNS拡散」の3つがより密接になると思います。
H:単に掲出して終わり、ではなく、体験設計まで含めたメディアになる。
K:見る側も「探す」「共有する」という行動が当たり前になってきています。
S:広告との関わり方自体が変わってきているのを感じます。
OOHは「掲出して終わり」から「設計するメディア」へ
かつてのOOHは「いい場所に、大きく出す」ことが価値の中心でした。
しかし今、OOHは「現地で見てもらう」だけでなく「撮って、共有してもらう」価値が加わり、その出稿スタイルも大きな変化の真っ只中です。
一方で、「いいバズり」と「意図しないバズり」の違い、数値化だけでは測れないクリエイティブの価値など、作り手・送り手として向き合うべき難しさも浮かび上がりました。だからこそ、過去事例から学ぶことの意味が増しているとも言えます。

総合報道「OOH事例集2025」(2026年6月15日発売)
実際にどんな広告が、どこで、どんな狙いで展開され、どう話題になったのか。2025年のOOHのリアルと、これからのヒントをOOH事例集2025で掴んでいただければと思います。

