つっかかりさえも“人間味”として好意的に受け取られる
八木：音声メディアで放映される番組（コンテンツ）は、多くが自然な会話や語りです。話し手の間違いやつっかかりさえも、人間味として受け取られ、親近感を生み出すことがあります。
聴き手は声だけを頼りに話し手の人柄や状況を想像し、より深い心理的つながりが生まれる可能性も秘めています。
編集部：「心理的つながり」って観点だと、オードリーが今年2月に東京ドームで実施したラジオイベント「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」でチケットの予定枚数4万5000枚、追加発売した5000席が完売したってニュース（参照）が記憶に新しいですね。ライブビューイングも含むと16万人以上が参加したという、イベントの規模感に驚きました。
八木：そうですね。音声メディアは熱狂的なファンがつく事も多いです。
あと、動画と比べて音声メディアは一般的に編集が少ない傾向にあり、より本物の飾り気のない印象を与えることができます。動画メディアは多くの場合、カットや切り替えが頻繁に行われ“キレイな部分”だけ切り抜かれていますよね。視覚情報が加わることで、聴き手の想像力を制限する面もあります。
欲しい情報がピンポイントで集まるという意味では有効だと思いますが、動画と音声では全く異なる媒体だとも思っています。
今お伝えした音声メディアの特性は科学的に完全に実証されているわけではありません。感覚的な面ではありますが、音声メディアにはより自然で親密な関係性を構築する可能性があります。
出稿が多い業種はエンタメ、金融、そして1位は…
編集部：「デジタル音声メディア」で広告出稿が多いのはどういった業種でしょうか。
八木：アメリカで調査されたポッドキャストの広告出稿業種ランキングに、興味深いデータがあります。通常の広告業種ランキングでは、エンターテインメント、金融サービス、消費財、小売り、薬局などがよく見られます。
ただポッドキャストの場合、驚くべきことに「その他」のカテゴリーが1位に入っているんです。
【出典：U.S. Podcast Advertising Revenue Study: 2023 Revenue & 2024-2026 Growth Projections】
一般的な広告媒体では「その他」は最下位に位置することが多いのですが、ポッドキャストでは逆転しています。裏を返せば、多様な業種の広告を扱っているということです。
ポッドキャストでいうと「多様性」とか「テーマ特化」みたいな特徴があるので、全体的なリーチは小さくても、番組の数だけ特定の興味を持つ聴衆に効率的にアプローチができます。
編集部：…とは言いつつ、プロから見た「音声メディア」にマッチする業種はありますか。
八木：地上波ラジオとデジタル音声メディア両方の観点から見ると、「車」関連の広告は特に効果的です。「車の運転中」が音声メディアに最適な聴取環境でかつ、ほとんどの車にラジオが標準装備されている事も大きな要因ですね。
【株式会社オトナル 代表取締役 八木太亮 氏】
あとは、インターネット、金融や消費財の分野も音声広告との相性が良いことが分かってきています。意外かもしれませんが、無形商材は事例も多いです。
無形商材は複雑な仕組みを持っていることが多く、視覚的な説明だけでは十分に理解されにくい場合が多いですが、音声のみだからこそ聴取者自身が“考えようと”する。だから覚えてもらいやすく、証券や株式投資のような抽象的な概念を説明する際に特に有効です。
【本クリエイティブはオトナルサイト内で掲載許可を頂いた音源を転載しています】
編集部：英語学習の番組なら英語教材は相性良さそうですね。
八木：そうですね、まさにピッタリです。繰り返しになりますが、音声広告の特徴として、ターゲットとなるリスナー層に合わせて内容をカスタマイズできる点が大きいです。
ビジネス向けの番組では、リスナーの自己啓発意欲に訴えかける形で筋トレやフィットネス関連の広告を展開することがありますが、視聴者属性や興味関心に応じて、文脈を意識した広告メッセージを届けやすいことはポイントですね。
“ブランドイメージ”が購買要因の商材は音声がオススメ
編集部：そういえば、「プシュ」って缶を開ける音声が印象的なビールの広告を聞いたことがあります。
八木：有形商材でも、音声広告と特に相性が良い領域があります。その代表例は、ブランディングが重要な役割を果たす商品です。
例えばビールは見た目での差別化が難しい商品です。厳密には中見も各社違いはありますが、一般にそこまで見極めることは難しい。つまり、商品ブランドの好き嫌いや付加価値によって判断に大きな影響を与えることが多い商品といえます。
パソコンなどの電子機器も同様ですね。個別のスペックで差別化することが難しいため、「壊れにくい」などのブランドイメージが購買決定の重要な要因となります。
スペックだけでなく、ブランドの持つイメージや価値観を消費者に伝えて選んでもらえることが重要で、音声広告はブランディングメッセージを効果的に伝達できる媒体として機能しやすい。
編集部：商材だとどういったものがありますか。
八木：例えば、就寝前の時間帯に聴かれやすいラジオ番組で「寝具」の広告を出したり、ランニング中やワークアウト中に音声コンテンツを楽しむ人々に対して、スポーツ用品ブランドの広告を出すイメージですね。
【本クリエイティブはオトナルサイト内で掲載許可を頂いた音源を転載しています】
次のページ
音声広告の中で最も効果が高いとされる手法
音声広告の中で最も効果が高いとされる手法
加藤誠也 アドクロ編集部
記事ランキング
