近年、生成AI技術は企業のマーケティング活動を一変させる可能性を秘めています。しかし、その活用方法は「業務効率化」の域を出ず、「具体的にどう売上や成果に繋げるのか」という実践的な視点が不足しているのが現状ではないでしょうか。そこで今回、生成AIを活用した最先端の事業をリードし、その裏側で「成果に直結する生成AIスキル」を培ってきた、つきみ株式会社代表取締役の山本達巳氏にお話を伺いました。
山本氏は、本業であるECコンサルティングの傍ら、生成AIの活用術をテーマにしたYouTubeチャンネル「AIデリバリー」を運営しています。
特に、「プロンプトの設計術」や「画像生成」に関する動画は1万回再生を突破するなど、その実践的なノウハウが今、大きな注目を集めています。また、AI活用支援を通じてクライアントの作業時間を大幅に圧縮するなど、まさに「ビジネスに直結する生成AI活用のプロフェッショナル」です。
本コラムでは、マーケティングに関する仕事をしている人、マーケティングを活用したい事業者が集まる「静岡マーケティングサロン」の運営アシスタント・秘書をしている柳井が、山本氏に、特別な予算や複雑なシステムに頼らず、マーケティング・リサーチ・広告活動にすぐに活かせる即戦力の生成AI活用術について、具体的な活用実例とその思考法をインタビュー形式で深掘りしていきます。経営者、そしてマーケティング・広告に携わるすべての読者の皆様に、生成AIを「なんとなく便利」から「確実に成果を生むパートナー」へと進化させるヒントをお届けします。
AI活用に特別なスキルは不要！「知っている」で終わる経営者が陥るワナ
柳井：山本さん、生成AIを「知っている」状態から「使いこなす」状態へ移行するために、最も重要だと感じるスキルは何でしょうか？
山本：スキルというよりも、私は「慣れ」が一番重要だと考えています。若者がTikTokやスマホを自由自在に使いこなすのは、マニュアルを読んだからではなく、普段から息を吸うように使っているからです。生成AIも同じで、普通に毎日触っているかが分かれ目になります。まずは「不便だな」と感じることがあれば、使ってみることが重要です。
柳井：生成AI導入時に経営者が陥りやすい「誤解」や「失敗」は何でしょうか？
山本：よくある失敗は、「生成AIはすごい」と聞いて使ってみたものの、現実とのギャップで「結局仕事で使えない」と諦めてしまうことです。また、普段から生成AIに触れていないと、「スマホで全ての仕事ができる」といった誤解を持つように、生成AIの限界値がわからなくなります。ある程度触って、「ChatGPTはここまでの仕事ができるが、これ以上はできない」という肌感覚を持つことが重要です。
体感速度100倍！？Gemini「ディープリサーチ」で市場調査を効率的に行う方法
柳井：マーケティング・リサーチに直結する生成AI活用術について教えてください。まずは、リサーチ分野での生成AI活用法と成果についてお聞かせください。
山本：私が活用しているのは、Geminiの「ディープリサーチ」機能です。ネットの膨大な情報や論文、ブログなどを引っ張ってきて、それっぽい情報を抽出する機能です。これにより、新規リサーチの速度は体感的に100倍くらい速くなっていると思います。
【DeepResearch使用例】
柳井： 体感とはいえ100倍は驚異的ですね。では、このディープリサーチと分けて、顧客の隠れた本音や真のニーズを見つける際には、どのような生成AI分析を使っていますか？
山本： 顧客インサイトの発見では、ディープリサーチは使いません。代わりに、レビュー分析ツールを使ったり、アンケートや顧客レビュー何千件分などのデータをダウンロードし、生成AIに読み込ませて分析を行っています。
以前は、人間が1件ずつ目視で確認し、まとめるという作業に膨大な時間がかかっていました。今は、何千件ものレビューを生成AIに読ませて、「この商品を選んだ理由5つと、選ばなかった理由5つ。そして、改良するならどこか3つ」といった指示を出すことで、人間が行っていた作業を生成AIに代替させています。
【現場実例と成果①】レビュー分析で判明した「肥料」に対する1番の不満はまさかの「子供関係」
柳井：そのリサーチが具体的な新商品開発や事業の方向転換に繋がった実例があれば教えてください。
山本：EC事業者の支援例として、ある肥料メーカーの商品開発があります。Amazonなどの競合商品のレビューを片っ端から生成AIに叩き込み、お客さんが現状の肥料に対して「何を不満に感じているか」をグラフ化しました。
その結果、最も不満が多かったのは「子供関係」でした。具体的には、子供に使わせたいのにこぼれる、計量できない、手にかかって危ないなどです。このインサイトに基づき、「子供と親子で一緒に使える」というコンセプトの商品を作ったところ、すごく売れました。
さらに、第二弾の活力剤でも、「こぼれる」「危ない」といったネガティブな意見を改善した商品をリリースしたところ、発売後すぐ毎日のように売れるという状態になっています。機能的なベネフィット（他社がこぼれる→こぼれない機能追加）を提案してくれるのは、生成AIリサーチの最も強い部分です。
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「生成AIへの指示」自体も生成AIに作らせて効率化
「生成AIへの指示」自体も生成AIに作らせて効率化
柳井紗緒里 CitrineWebDesign
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