「面倒な下準備」すら生成AIに任せる！プロンプトの量産体制を作る方法
柳井：広告コピーやブログ記事といったマーケティングコンテンツの制作では、生成AIをどう活用し、クオリティを担保していますか？
山本：コンテンツ制作では、「作業専用のプロンプト」を事前に作り込んでおくことが必須です。NotionやGoogleドキュメントなどに、いつでもコピーできる状態でテンプレート化します。さらに再現性を高めるために、GemsやGPTs（生成AIのミニアプリのようなもの ）を活用しています。事前にこの分析プロセスを組み込んだミニアプリを作っておけば、後はそこにデータを入れ、簡単な指示を出すだけで、毎回同じ分析を実行できるんです 。
プロンプトには、前提条件（目的、目標、リソース）や制約条件、そして出力形式（フォーマット）をすべて盛り込みます。これにより、毎回99%同じ品質の出力が得られ、コンテンツ作成の工数が大幅に削減できます。
柳井：この「下準備」が面倒だと感じる人もいるのでは？
山本：その場合は、「面倒くさいという作業すら生成AIにやらせる」のが正解です。例えば、「今からブログを作りたいので、毎回同じ出力になるようにプロンプトを作りたい。私に何が必要か質問してください」と生成AIに質問させるのです。生成AIが質問してくるので、それに答えていけば、生成AIがMarkdown記法（#や-などの記号を使って見出しや箇条書きを簡単に記述するルール）を使った「あなた専用のプロンプト」を作り上げてくれます。
【現場実例と成果②】広告クリエイティブは「数」が命！生成AIでABテストを高速化する現場ノウハウ
柳井：広告のクリエイティブ制作で、生成AIを活用して成果が向上した事例はありますか？
山本：あります。私たちは、Illustratorを使うデザイナーさんの作業より、ABテストの速度を上げるために生成生成AIを活用しています。例えば、Geminiなどの画像生成機能で、10秒で1枚作る画像を500枚ほど大量にパパッと作り、それをABテストの素材としていく。これにより、従来の制作フローに比べて大幅な時短になります。
柳井：デザイナーさんの仕事は減ってしまうのでしょうか？
山本：生成AIを使えないデザイナーさんの仕事は減りますが、使えるデザイナーさんは仕事が増えています。生成AIが使えるデザイナーは、素材を準備する手間がなくなり、ざっくりとした構成案から生成AIで画像を生成できます。大きな会社でも、撮影予算を削り、生成AIでの画像生成に切り替えているケースが増えています。
経営者が陥るDX失敗の二の舞？「AIの仕組み」を軸に業務を逆転せよ
柳井：生成AIを導入したことで、担当者の工数はどれくらい削減され、その時間をどのように「よりクリエイティブな業務」に振り分けましたか？
山本：契約段階で月40時間の稼働で契約していても、裏で生成AIに作業させることで、実際の稼働時間を大幅に圧縮できます。これにより、今まで5社が限界だったキャパシティが、20社に増えるという可能性も生まれます。
また、削減した時間で、今まで外注していた市場調査や画像制作といった業務を内製化できるようになります。私の場合は、今まで全体の戦略立案やディレクションに携わることが多かったのですが、AIのおかげでデータ入力や簡単なコンテンツ作成といった実務レベルの作業まで自分で拾えるようになり、本当に頭を使う別の業務に時間を使えるようになりました。
柳井：マーケターの「頭の中」が可視化されるということですね。
山本：その通りです。以前はコンサルタントやマーケターの頭の中はブラックボックスで、特別な知識があるように見えがちでした。しかし、生成AIを使うことで、リサーチ結果やアイデアを簡単にスライド化させ、社長がすぐに見れる形で提案できるようになりました。マーケターの思考プロセスを一般の人が見れるようになったことも、生成AIがもたらした大きな変化だと思います。
柳井：最後に、生成AI時代に競争優位性を築きたい経営者やマーケターにメッセージをお願いします。
山本：最も重要な投資は、「経営者自身が生成AIを触る時間を作ること」です。生成AIを理解していない社長が生成AI人材を入れても、使いこなすことはできません。
そして、生成AI導入においては、「現状の仕組みの上に生成AIを乗せる」のではなく、「生成AIの仕組みの上に現状のオペレーションを乗せていく」という逆転の発想が必要です。
デジタルトランスフォーメーション（DX）が失敗したように、従来の業務の一部を生成AI化するだけでは中途半端に終わります。「業務のすべてをまず生成AI化するという前提」で考え、どこに人間が必要なのかを逆転で考え直さないと、DXと同じように失敗することになります。この逆転の発想こそが、生成AI時代に競合に負けない競争力を築くための最重要戦略です。
インタビュアー 柳井のまとめ
山本達巳さんの「生成AI活用はスキルよりも慣れが重要」という言葉は、生成AI導入への心理的なハードルを大きく下げてくれるものでした。特に印象的だったのは、生成AIリサーチによって競合商品のレビューから顧客の「不満」という隠れたインサイトを見つけ出し、それがそのまま売上増に繋がったという具体的な実例です。
生成AIは単なる「時短ツール」ではなく、「ビジネスの勝ち筋」を見つけ出すための強力な分析パートナーとなり得ることを痛感しました。
「業務のすべてを生成AI化するという前提で、人間は何をすべきかを逆転して考える」という山本さんの視点は、まさにこれからの経営層・マーケターが持つべき競争戦略です。今日からでも、日常業務に生成AIを取り入れる「慣れ」を意識し、その恩恵を最大限に享受していきましょう。
柳井紗緒里 CitrineWebDesign
記事ランキング
