麦焼酎市場の牽引役として40年以上愛され続ける「iichiko（いいちこ）」。同商品が日本各地で展開している美しい風景写真と印象的なコピーが特徴のポスターは、40年以上同じスタイルで展開され、現在では多くのファンに愛されています。
「1枚の力は小さくとも、長く続けることで厚みを増す」という考えのもと、1984年から開始。当時、お酒の広告といえば「飲む量」を競うような時代でしたが、iichikoは「少し飲んで少し酔う」という独自の価値観を掲げ、日本人の心の中にある「原風景」を切り取ったビジュアル表現で、消費者の日常に寄り添ってきました。
今回は三和酒類株式会社 執行役員本部長の幡手剛氏と、同社の広告展開を手掛ける株式会社日本ベリエールアートセンター 横田比呂人氏に、「iichiko」のブランド戦略や、細部にまでこだわり抜いたポスター制作の舞台裏について話を伺いました。
駅ポスターから始まった「iichiko」のブランド戦略
三和酒類の事業について教えてください
幡手（三和酒類）：三和酒類は日本酒からスタートし、その後ワインや焼酎などの製造を手がけています。
主力商品は本格麦焼酎「iichiko（いいちこ）」で、売上の90%以上を占める看板商品です。1979年に発売され、2025年3月時点で46年の歴史があります。現在では30カ国以上に輸出されるグローバルな商品になりました。
iichikoといえば駅に掲載されたポスターが印象的ですが、いつから広告展開されているのでしょうか
横田（日本ベリエールアートセンター）：1984年から広告活動を開始し、最初に取り組んだのが駅ポスターです。実施前から「iichiko」はすでに九州地方で高い人気を誇り、口コミを通じて少しずつ全国へと知名度が広がりつつあるタイミングでした。
全国展開を進めるにあたり、商品のファン層を掴むためにマーケティングリサーチを行ったのですが、「40代」「年収600万円以上」「日本経済新聞の愛読者」というペルソナ像が浮かび上がりました。加えて、多くの愛飲者が「知人に勧められて飲み始めた」という共通点も判明し、こうした特徴を持つ層に商品を広めるには何が効果的か、という視点で広告戦略を練り始めました。
ポスター以外に展開されている広告はありますか
横田：定期的にやっているものは、毎月の駅ポスター、あとは年に1本CMを制作して、全国で放映しています。加えて、ナショナルジオグラフィック、芸術新潮、dancyu、それから東京カレンダーと雑誌4誌に広告を掲載しています。
芸術や美に関する雑誌が多いですね
横田：そうですね。そもそもお酒は嗜好品。日々の生活に必要なものではありませんから、広告でいくら「買ってくれ！」と訴えたところで購買に至るものではありません。だからこそ、なるべく“そばに寄り添う”というか、“自分が愛飲しているものは、よいものだ”と思っていただける、ステータスを感じていただけるような媒体に広告を出す形でずっと続けてきました。
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毎月544駅に866枚を掲載、40年以上駅ポスターを続ける理由
毎月544駅に866枚を掲載、40年以上駅ポスターを続ける理由
加藤誠也 アドクロ編集部
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