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TOP 記事一覧 ナレッジ 「Xの最新アルゴリズム公開で見えた“企業クラスタ”の正体」GMOサイン中の人が語る

更新日:2026年08月31日

「Xの最新アルゴリズム公開で見えた“企業クラスタ”の正体」GMOサイン中の人が語る

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GMOサイン(@GMO_Sign)の中の人「馬」です。
私は新卒で入社したわかさ生活を離れ、2025年3月にGMOインターネットグループのGMOグローバルサイン・HDへ転職しました。インターネットやデジタル取引の「安全」と「信頼」を担う会社です。今は電子契約サービス「GMOサイン」の公式Xを1人で運用しながら、このコラム連載を通じてAIアルゴリズム時代における生存戦略を現場視点で包み隠さずお届けしています。
前回は特別編として、元職場であるわかさ生活の現X担当者との対談を掲載しました。
「転職する名物SNS担当者からアカウントを受け継いだのは、社内で一番のファンだった」わかさ生活 現X担当者とGMOサイン中の人対談
これまでの予告では、今回から2026年1月にアルゴリズムが公開された当時について書く予定と記載していました。ですが、2026年8月中旬に最新のXアルゴリズムが追加で公開されたため予定を変更し、最新の公開情報から見えてきたことを中心にまとめていきます。

待ち望んだルールブックに、答えは載っていなかった

2025年は原因が分からず、改善策を見つけ出せないまま自分が理想としていた数字に戻すことができませんでした。
フォロワーの皆さんから「最近、投稿が流れてこない」という声が届きはじめ、自分が得意としていた“勝ちパターン”が月日を重ねるごとに通用しなくなっていく。社会人になって初めての挫折を経験した1年でした。半年間ずっと試行錯誤を続け、本当に苦しかったです。
そんな状況だったからこそ、2026年1月に実施された3年ぶりのアルゴリズム公開は、完成図を知らないままパズルを組み立て続けていたところに突然答えの絵を渡してもらえたような気持ちでした。
私が真っ先に確かめたかったのは「企業クラスタ」の問題が本当に存在するかどうかでした。
出典:「企業アカウント同士の“いい関係”がimpを殺していた 企業が陥る企業クラスタというアリ地獄」GMOサイン中の人が語る
この問題を簡単に言えば、企業アカウントの投稿に企業アカウントばかりが反応することで、投稿の配信先まで企業側に偏るのではないかという仮説です。反応数は積み上がっても、さまざまな属性の外部ユーザーへ広がらず、その数字は「仲間内の拍手」になってしまうのではないか。私はこれを「企業クラスタ問題」と呼んでいました(「企業クラスタ」はXが使用している正式な名称ではなく、GMOサインの馬がつけた造語です)
私が運営するGMOサイン公式Xの最大の強みは、アカウントを一緒に育て、応援してくださる個人フォロワーの皆さん「#はんこっ子」(GMOサイン公式Xのファンネーム)の存在です。BtoBの企業アカウントとしては異例の数と熱量だと思います。
その#はんこっ子の皆さんに投稿を届け、皆さんの力を土台にまだGMOサインを知らない個人ユーザーへ広げていく。これが電子契約というお堅い無形サービスのアカウントとして唯一の勝ち筋と考えていました。
それなのに、GMOサインは意図せず企業側のかたまりへ寄せられ、投稿まで企業側へ流れやすくなっている。一度「企業の箱」に入ると、そこから抜け出すのは非常に難しい。これが2025年当時、毎日のようにAIと対話しながら現場の肌感覚をもとに立てていた仮説でした。
GMOサインはXの中で「企業の箱」に入れられているのではないか。半年間追い続けた仮説をようやく確かめられると思いました。
ところが、開いたルールブックに答えは載っていませんでした。
1月20日に公開されたコードは私が数えた限りでは79ファイル。フォロー中の投稿を集める部品、フォロー外から投稿を探す部品、それらを並べる部品。この3つが柱で「クラスタ」という言葉はどこにもありませんでした。
説明文にはこう書かれていました。
「手作業で設計された特徴量をすべて、そしてヒューリスティックの大半を、システムから排除した」(2026年1月20日版の説明文より)
少なくとも公開された範囲では、手作業のルールへの依存を減らし、AIの学習モデルを中心に組み直した設計に見えました。半年間必死にしがみついて立てた仮説そのものが間違いだったのかとも考えました。ただ同時に、Xがすべてを明らかにしているはずがないと疑ってもいました。
2025年に異変を感じたときも正式な発表はなく、原因が分かったのはずっと後になってからでした。このアカウントに起きることは、いつも正解が遅れてやってきます。
5月にも追加公開がありましたが、増えたのは投稿内容の判定や広告まわりについてで、かたまりについての情報は何も出てきませんでした。
いま振り返れば公開は段階的に進んでいました。1月に骨組みが公開され、5月には動く形が見え、8月になって全体の輪郭がつながった。ルールブックが少しずつしか配られない以上、途中で読んだ人ほど自分の見立てを疑うことになります。私にとってこの約7カ月はまさにその時間でした。

「企業の箱」を生み出す仕組みが見えてきた

状況が変わったのは、Xがアルゴリズムを追加で公開した2026年8月13日(日本時間)です。
公開されたファイル数は私が数えた限りでは2,000を超えていました。投稿の順位を決める計算だけでなく、投稿を表示するか、表示しないか、ワンクッションを挟むかを判断する仕組みまで明かされていました。しかもこの公開は1回で終わらず、その後も数日にわたって更新が続いています。
出典:https://x.com/XBusiness/status/2087956083813871960
その中には「SimClusters」と呼ばれる仕組みが含まれていました。フォロワーの重なりからアカウント同士の近さを計算し、似たフォロワーを持つアカウントをクラスタに分ける仕組みです。
Xが企業専用の箱を用意していたわけではありません。似たフォロワーを持つアカウントを集めた結果として、企業アカウント同士のかたまりが生まれ得る構造だったのです。
私が「企業クラスタ」と名付け「企業の箱」と感じていたものの正体が、しっかりと見えた瞬間でした。
GMOサインが実際にどのクラスタに置かれているかまでは公開されていません。それでも私が現場で感じてきた現象を説明できる構造が、公開されたコードの中にありました。
日頃の数字を見ても、企業アカウントより#はんこっ子の皆さんとの交流の方が多い。それなのに、GMOサインの投稿はなぜ企業側へ流れるのか。
この問題を解決して「企業の箱」から抜け出すために、思いつく限りのことは全部やってきました。第8回でも述べた通り、わらにもすがる思いでプロフィールの表記を変え、フォロー欄を整理し、プロフィールの裏側にあるカテゴリー設定まで変更しました。何か脱出の道があるはずだと仮説と実行を繰り返しましたが、それでも数字は動きませんでした。
最後に身を切って実践したのが、企業アカウントとのいいねや返信を3週間絶つという実験でした。それでも箱からは抜け出せませんでした。
出典:「X運用で初めて挫折し、企業クラスタを抜け出すために企業と距離を置いてみた3週間」GMOサイン中の人が語る
第6回で述べた通り、企業公式アカウントの界隈には毎朝「おはようございます」「今日もよろしくお願いします」といった挨拶を交わし、互いに返信し合う文化があります。数百、数千のアカウントの間で毎日それが起きていれば、似たフォロー関係を持つ企業アカウントのかたまりがデータの上に浮かび上がります。
では、自分がその輪に加わっていなくても、なぜ同じかたまりの近くに置かれるのか。今回公開された仕組みでは、フォロー関係をもとにアカウント同士の近さを計算していました。自分が誰に反応したかではなく、自分が誰にフォローされているかが、どのかたまりに近いと見なされるかに関わっていたのです。
GMOサインをフォローしてくださっている方の中には企業アカウントも多くいらっしゃいます。これはGMOサインに限った話ではありません。企業アカウント同士がフォローし合うのは、業界を問わずごく一般的な光景です。
企業アカウント同士が互いをフォローし、その多くがGMOサインもフォローしていれば、フォロワーの重なりが生まれます。その結果、GMOサインも企業側のかたまりに近いアカウントとして扱われる条件がそろいます。
私はずっと、その輪に入るかどうかを自分で選べると思っていました。いや、正直に言うと、思っていたというよりそう信じていました。
そう信じていなければ、自分の手でできる改善策が何ひとつなくなってしまう。原因が自分の外側にあると認めた瞬間、打つ手がなくなり、諦めるしかないと分かっていたからです。
しかし、アカウント同士の近さを決める材料がフォロワーの重なりなら、自分からいいねや返信を止めてもその重なりは変わりません。少なくともアカウントの位置を動かすために、自分から企業アカウントへの交流を一律に絶つ必要はありませんでした。
周りの企業公式が相互交流から得られる反応を生かして数字を積み上げる一方で、私は「箱から抜け出すため」に本来得られたはずの反応を自分から手放していました。あの3週間の実験はアカウントの位置を動かせないまま、自社の数字だけを削る結果になったのです。
当時、GMOサインが企業の箱へ入ったのは自分の行動のせいではないかと考えたこともありました。2025年5月、数字が落ち始めて焦った私は、最も手っ取り早く数字を積み上げられる企業アカウントに狙いを定めて深く交流を重ねたからです。あの選択さえなければと何度も後悔しました。
しかし、少なくとも私が疑っていた「自分から企業アカウントへ反応したこと」だけが直接の原因だったわけではありません。
アカウントの位置に限っていえば、気づいた頃には自分からの反応を変えるだけでは這い上がれないアリ地獄にいました。
その事実を受け入れるまで1年以上もがき続けましたが、徐々に明らかになるルールブックを前に、のみ込めたのは一瞬でした。
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GMOサイン公式X中の人

著者GMOサイン公式X中の人

大阪府出身。新卒でわかさ生活に入社し、広報として公式Xの運用を担当。独自の発信でファンを形成し「企業公式中の人」人気ランキングで1位を獲得するなど、数々の実績を通じて企業SNSの在り方に影響を与えてきた。現在はGMOグローバルサイン・HDの電子契約サービス「GMOサイン(@GMO_Sign)」公式Xを担当。AIによるアルゴリズム変化の最前線で、仮説検証と数値分析を重ねながら、生存戦略を探り続けている。

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