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TOP 記事一覧 ナレッジ 「Xの最新アルゴリズム公開で見えた“企業クラスタ”の正体」GMOサイン中の人が語る

更新日:2026年08月31日

「Xの最新アルゴリズム公開で見えた“企業クラスタ”の正体」GMOサイン中の人が語る

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動かせる場所は、もう一段下にあった

さらに読み進めると、話はそこで終わらないことが分かってきました。
正確には、アカウントを一つの場所へ閉じ込めるような境界線のはっきりした箱があったわけではありません。実際は似たもの同士がゆるやかに集まり、複数のかたまりと強弱を持って結びつく仕組みでした。そしてXは、アカウントの位置と、そこから発信される投稿の位置を別々に見ていました。
公開された仕組みでは、アカウントがどのかたまりに近いかには、フォロワーのつながり方が大きく関わります。
一方、投稿の位置は、その投稿にいいねした人たちが普段どのような発信者をフォローし、何に興味を持っているかによって形づくられます。
そのため、同じアカウントから発信された投稿でも、どのような人たちからいいねが集まるかによって、近づくかたまりの方向は変わり得ます。
さらにXの「おすすめ」では、その人が最近反応した投稿を手がかりにして興味が近そうな別の投稿が表示されます。
例えば、ネコや犬の画像にいいねすると、タイムラインに別のネコや犬が次々に出てくる。企業アカウントの「おはよう」投稿にいいねすると、企業アカウントの投稿が増えやすくなる。私たちが日頃から体験しているあの現象です。
これは絶望的な話ではありません。
アカウント側の位置は自分の行動だけでは簡単に動かせません。ですが、投稿側の位置は投稿ごとに変わります。
#はんこっ子の皆さんから多くいいねされた投稿と、企業アカウントから多くいいねされた投稿では、近づくかたまりの方向が変わる可能性があります。同じアカウントから発信した同じ日の投稿であってもです。
私はアカウントの位置と、そこから出す投稿の位置は連動しているものだと思い込んでいました。約1年間、私は自分の負けをアカウント全体を覆う「企業の箱」のせいだと思っていました。しかし、動かせる場所はもう一段下にありました。
それは一つひとつの投稿でした。

問題は、届け先ではなく、出会い先だった

ここで私は、もう一つ大きな思い違いに気づきました。
Xの「おすすめ」には大きく分けて2つの道があります。ひとつはすでにフォローしている人の投稿を集める道。もうひとつはまだフォローしていない人の投稿を探す道です。
ここまで説明してきた「興味の近い投稿を探す仕組み」が使われるのは主に後者でした。
「#はんこっ子」の皆さんはすでにGMOサインをフォローしてくださっています。つまり、フォロワーの皆さんへ投稿を届けるための道は、この仕組みとは別に用意されていました。GMOサインが企業のかたまりに近い場所にいたとしても、それだけでフォロワーの皆さんへ届く道が消えるわけではありません。
私は1年間ずっと「企業の箱に入ったせいでフォロワーさんに届かなくなった」と考えてきました。しかし、少なくとも今回見えてきた仕組みだけでは、その現象を説明できませんでした。
フォローされていれば必ず表示されるわけではありません。集められた投稿は、そのあとにどの投稿を上に出すかという順番を決められます。そこで順位が下がれば、フォロワーの目に入らないことはあります。先日公開されたXアルゴリズムで見れば、その原因をすべて「企業の箱」に求めるのは違っていました。
では、あの箱は何に影響していたのか。答えは届け先ではなく、出会い先でした。
企業側のかたまりに近づいたGMOサインの投稿は、企業側の投稿に普段から反応している人への候補になりやすい。一方、個人向けの投稿に反応している人の候補にはなりにくい。
その結果、まだGMOサインをフォローしていない企業アカウントや、企業アカウントの投稿を普段から見ている個人ユーザーには表示されやすくなる。その反対側にいる、将来フォロワーになってくれるかもしれない個人とは出会いにくくなっていた可能性があります。
フォローしていない人の投稿を探す仕組みは他にも並行して動いています。このかたまりだけで表示のすべてが決まるわけではありません。それでも、出会える相手を企業側へ寄せていた可能性はあります。
自分の仮説はすべてが間違っていたわけではありません。むしろ、驚くほど方向性は合っていました。ただ少しだけ見ていた場所が違いました。
当たっていたのは「届かなくなる」ではなく「出会いにくくなる」の方だったのです。
私がこの5年間、複数の企業アカウントの推移を見てきた範囲では、キャンペーンを行わない期間にフォロワーが純減する例は珍しくありません。数字が上向きはじめたタイミングを見ると、キャンペーンが開催されているケースがほとんどです。
第3回では、フォロワーを増やし続けるために懸賞キャンペーンを打ち続ける状態を「終わりのないチキンレース」だと表現しました。
出典:「フォロワーが多いのに、なぜ投稿は広がらないのか」GMOサイン中の人が語る
私が新卒で入社したわかさ生活のような単品通販ビジネスモデルでは、売り上げの土台となる、毎月商品をお届けする「定期購入者数」は何もしなければ減っていきます。その減る分以上を新たなマーケティング施策などによって増やし続ける。
企業Xのフォロワーも同じです。フォローの解除は毎日少しずつ起こります。それを上回る新しい出会いがあって、はじめて数字は増えていきます。本来は減ってマイナスとなるものを普段の運営で伸ばし総合的にプラスにする。それが新卒の頃から私が行ってきたことでした。
ところが2025年、GMOサインのフォロワー数は運用開始直後の増加が止まったあと、ゆるやかに減り続けました。2020年から企業のXアカウント運営に携わってきて、ほとんど初めての経験でした。
GMOサイン(@GMO_Sign)公式Xのフォロワー数推移(2025年1月〜2026年8月中旬)。2025年2月19日に「馬」がGMOサインへの転職を発表し、フォロワーは約2,000人増加。3月17日の運用開始後には、さらに約6,000人増えました。しかし4月をピークに増加は止まり、2025年末にかけて約2,000人の純減となります。2026年に入ると再び増加に転じ、8月中旬には約5万8,000人となっています。
今思えば、あの1年は解除される分を、新しい出会いで補いきれていなかったのだと思います。私が「届かなくなった」と感じていた不調の一部は、新しい人との出会いが減っていたことだったのかもしれません。
この1年、私はアカウントを「企業の箱」から動かす方法を探し続けてきました。しかし、次に向き合うべき問いはそこではありません。
正直に言うと、2025年の段階でうすうす不可抗力な問題だと気づきながらも諦めたくなくて、ずっと目をそらしていました。今回の公開は戦略を考え直すいい機会になると思います。
どうすれば、まだGMOサインを知らないユーザーと出会い続け、アカウントを右肩上がりで成長させ続けられるのか。どうすれば、その人たちが思わず反応したくなる投稿を作れるのか。
運用上においては、これから考えなければならないことはシンプルです。
これまで私は「楽」の再現性を求めていました。
体育座りをするだけで数千のいいねが集まり、日々の投稿を支えてもらえている。そんな強い土台があるからこそ、勝負をかけた投稿はさらに伸びやすくなりバズとなる。
Xばかりに時間をかけずに、企業アカウント運用を継続する上では、それが最も効率的で理想的な形でした。本音でAIアルゴリズムの元ではもう無理だと思いながらも、GMOサインへと来た後もこの再現性をずっとずっと追い求め続けていました。
しかし、今回公開されたアルゴリズムを見ると、AIはユーザーと投稿の組み合わせごとに、その人がいいね、返信、拡散などの行動を取る確率を予測しています。その予測値を重み付けして合計したスコアによって、候補として集められた投稿の表示順を決めています。
ユーザーが反応する確率をAIが予測し、その結果をもとに表示順を決めるという大きな方向性は、AI中心のアルゴリズムへ移行してから変わっていません。今後、モデルの学習が進めば、誰がどの投稿に反応するかをさらに正確に見極めるようになっていくはずです。
昔のXとは、戦う上でのルールブックが変わり、今や別競技です。見た人が反応したくなる投稿を作り続けていかなければなりません。だとすれば、これから必要なのはただ投稿数を積み重ねることではなく、誰に見てもらい、どんな反応をしてもらいたいのかまで投稿ごとに設計することです。
難しい時代に入りましたが、ここからもう一度勝ちパターンを見つけられるよう、少し頑張ってみようかと思います。
いかがでしょうか。今回のアルゴリズムの公開により、第6回で紹介した「100件を超える返信がありながら、表示回数は5,000前後で止まる企業の朝のあいさつ」という現象も、これまでとは違って見えるようになりました。次回は、最新の公開情報から見えてきた「相互リプの限界」について、改めて考えようかと思います。
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GMOサイン公式X中の人

著者GMOサイン公式X中の人

大阪府出身。新卒でわかさ生活に入社し、広報として公式Xの運用を担当。独自の発信でファンを形成し「企業公式中の人」人気ランキングで1位を獲得するなど、数々の実績を通じて企業SNSの在り方に影響を与えてきた。現在はGMOグローバルサイン・HDの電子契約サービス「GMOサイン(@GMO_Sign)」公式Xを担当。AIによるアルゴリズム変化の最前線で、仮説検証と数値分析を重ねながら、生存戦略を探り続けている。

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